不動産所得がある個人事業主の確定申告【家賃収入・経費・減価償却】

不動産所得がある個人事業主の確定申告【家賃収入・経費・減価償却】
鮎澤パートナーズ|公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士
公認会計士(第28451号)・税理士(第142873号)・社会保険労務士・行政書士が監修。不動産投資家・大家業の確定申告・税務調査対応を専門的にサポート。
🏢 不動産所得特化 📋 税理士監修 📊 5棟10室判定

不動産所得の確定申告完全ガイド【家賃収入・経費・減価償却】

マンション・アパート・戸建て・駐車場の賃貸経営をされている方に向けて、不動産所得の確定申告を完全ガイドします。家賃・敷金・礼金の収入計上ルール、経費30種、建物の減価償却(RC47年・木造22年)、5棟10室基準による事業的規模の判定、サラリーマン大家の損益通算メリット、青色申告65万円控除の条件、税務調査対策まで網羅。この記事を読めば、自分で不動産所得の青色申告ができるようになります。

🏆 結論:不動産所得は「事業的規模(5棟10室)」で節税効果が大きく変わる

不動産所得は事業所得とは別の独立した所得区分で、「事業的規模(5棟10室基準)」に該当するか否かで税務上の取扱が大きく変わります。事業的規模なら青色申告特別控除65万円・青色専従者給与・全額資産損失算入が可能。一方、事業的規模未満では青色控除10万円のみで、税負担が大きくなります。家賃収入は契約上の支払期日基準で計上、礼金・更新料は売上、敷金は返還条件付なら預り金処理。建物の減価償却は構造別の耐用年数(RC47年・木造22年)で計算し、土地は減価償却対象外。サラリーマン大家は給与所得との損益通算で還付金を受けられるメリットあり。物件購入時の仲介手数料・登録免許税は土地建物の取得価額に含めて減価償却処理が原則です。

不動産所得とは【独立した所得区分】

不動産所得の定義

不動産所得は、所得税法第26条で「土地・建物・船舶・航空機の貸付けによる所得」として定義される独立した所得区分です。事業所得・給与所得・雑所得とは別に管理し、確定申告書では別の欄(収支内訳書または青色申告決算書の不動産所得用)に記入します。

不動産所得の対象 具体例
①土地・建物の貸付けマンション・アパート・戸建ての家賃
②不動産の上の権利の貸付け借地権・地上権・永小作権の地代
③船舶・航空機の貸付け船舶リース・航空機リース
④駐車場の貸付け(管理人なし)月極駐車場の駐車料金

💡 実務のポイント:駐車場貸付けの所得区分判定

駐車場の貸付けは管理形態で所得区分が変わります。①月極駐車場(舗装のみ・自由駐車)は不動産所得、②時間貸し駐車場(コインパーキング・管理人常駐)は事業所得または雑所得、③管理人付き駐車場(常時受付・洗車サービス等)は事業所得となるケースがあります。一般的なアパート併設駐車場・近隣の月極駐車場は不動産所得として処理します。

確定申告が必要なライン

不動産所得の確定申告は、所得金額が一定額を超えると必要です。「収入(家賃)」ではなく「所得(家賃−経費)」が判定基準であることに注意してください。

立場 確定申告ライン
本業大家(給与所得なし)不動産所得 > 基礎控除額(48万円目安)
サラリーマン大家(給与所得あり)不動産所得 > 20万円
サラリーマン大家・所得20万円以下所得税不要・住民税申告必要
サラリーマン大家・赤字損益通算で還付金獲得のため申告

事業的規模の判定【5棟10室基準】

5棟10室基準とは

不動産貸付業が「事業的規模」と判定されるかは、所得税基本通達26-9に基づく「5棟10室基準」で判定されます。事業的規模になると、青色申告特別控除65万円・青色専従者給与・全額資産損失算入等の節税メリットが得られます。

物件タイプ 事業的規模の基準
アパート・マンション独立した室数おおむね10室以上
独立家屋(戸建て)おおむね5棟以上
駐車場おおむね50台以上(5台で1室換算)
土地5件で1室換算

複数物件の換算ルール

戸建て1棟=アパート2室、駐車場5台=アパート1室、土地5件=アパート1室として換算し、合計10室以上で事業的規模となります。

例:アパート5室+戸建て2棟+駐車場10台の場合:

  • アパート 5室
  • 戸建て 2棟 × 2 = 4室相当
  • 駐車場 10台 ÷ 5 = 2室相当
  • 合計 11室相当 → 事業的規模に該当

事業的規模 vs 業務的規模の節税差

項目 事業的規模 業務的規模
青色申告特別控除65万円(電子申告)10万円のみ
青色事業専従者給与経費算入可不可
資産損失(取り壊し等)全額経費所得金額が限度
未収家賃の貸倒損失回収不能年に経費過去年の修正申告

🧮 シミュレーション:事業的規模と業務的規模の税負担差

不動産所得500万円のケース。業務的規模では青色控除10万円のみで課税所得490万円→所得税+住民税約95万円。事業的規模では青色控除65万円+青色専従者給与年120万円(配偶者)で課税所得315万円→約45万円。年間約50万円の節税効果+専従者給与による所得分散効果が継続的に得られます。

家賃収入の計上ルール

契約上の支払期日基準が原則

家賃の収入計上タイミングは、所得税基本通達36-5に基づき「契約または慣習により支払日が定められているものはその支払日」が原則です。「実際に入金された日」ではなく「支払期日」が基準になります。

家賃計上の典型例

契約条件 計上タイミング
月末払い・翌月分前払い月末(支払期日)
月初払い・当月分後払い月初(支払期日)
家賃滞納(未収)支払期日(未収家賃として計上)
前払家賃(数ヶ月分一括前受)前受金処理+月次按分

⚠️ 注意:家賃滞納でも支払期日に売上計上が必要

入居者が家賃を滞納している場合でも、支払期日に「未収家賃」として売上計上する必要があります。「入金されていないから売上計上しない」処理は税務調査で必ず指摘されます。回収不能が確定した時点で「貸倒損失」として経費計上する流れが正解です(事業的規模なら回収不能年に全額経費・業務的規模では過去年の修正申告)。

敷金・礼金・更新料の処理

敷金は預り金処理

敷金は「退去時に返還する義務がある預り金」のため、受取時には収入として計上せず、貸借対照表上の「預り金(または預り敷金)」として負債計上します。退去時に原状回復費用等を差し引いて返還、差額が出た場合は当期の収入として処理します。

礼金・更新料・保証金償却部分は売上

礼金・更新料・保証金の返還しない部分(償却部分)は、入居者から大家への一時金収入であり、受取時に売上計上します。

入居時の一時金 処理 売上計上日
敷金(返還する分)預り金(負債)退去時の差引額のみ
礼金売上(賃貸料)受取時(契約日)
更新料売上契約更新日
保証金(返還する部分)預り金(負債)退去時の差引額のみ
保証金(償却部分=返還しない)売上 or 5年均等償却契約日 or 5年

仕訳例:礼金10万円・敷金20万円受領時

  • 普通預金 30万円 / 売上(礼金) 10万円
  •         / 預り金(敷金) 20万円

不動産所得の経費30種

租税公課・税金

経費項目 勘定科目 注意点
①固定資産税・都市計画税租税公課物件分のみ
②不動産取得税租税公課 or 取得価額算入(選択可)取得初年度
③登録免許税租税公課 or 取得価額算入(選択可)取得初年度
④事業税租税公課事業的規模・5%
⑤印紙代租税公課契約書印紙

建物関連費

経費項目 勘定科目
⑥建物の減価償却費減価償却費
⑦設備の減価償却費(エアコン・給湯器等)減価償却費
⑧修繕費(原状回復・小規模修繕)修繕費
⑨資本的支出(大規模修繕・リフォーム)減価償却費(資産計上)
⑩共用部分の水道光熱費水道光熱費
⑪共用部分の清掃費支払手数料 or 清掃費

保険料・借入金

経費項目 勘定科目
⑫火災保険料・地震保険料損害保険料
⑬施設賠償責任保険損害保険料
⑭借入金利子(住宅ローンの利息部分)支払利息
⑮借入金の保証料支払利息 or 長期前払費用

⚠️ 注意:借入金の元本返済は経費にならない

不動産購入の借入金返済のうち、経費になるのは利息部分のみで元本返済部分は経費になりません。元本返済は借入金(負債)の減少として処理します。月々10万円返済(元本7万円+利息3万円)の場合、経費計上は3万円のみ。「ローン返済額全額が経費」は典型的な誤解で、税務調査で必ず指摘されます。さらに土地分の借入金利子は損益通算制限の対象となるため注意が必要です。

管理費・委託料

経費項目 勘定科目
⑯不動産管理会社への管理委託料支払手数料(管理費)
⑰建物管理組合への管理費(マンション分)支払手数料(管理費)
⑱修繕積立金修繕費(マンション)
⑲入居者募集の広告宣伝費広告宣伝費
⑳仲介手数料(賃貸契約時)支払手数料

その他

経費項目 勘定科目
㉑物件視察の旅費交通費旅費交通費
㉒不動産投資セミナー・書籍研修費・新聞図書費
㉓税理士・司法書士報酬支払手数料
㉔司法書士の登記費用支払手数料 or 取得価額算入
㉕通信費(物件管理用)通信費
㉖会計ソフト利用料支払手数料 or 通信費
㉗振込手数料支払手数料
㉘地代(借地物件の場合)地代家賃
㉙青色事業専従者給与(事業的規模)専従者給与
㉚未収家賃の貸倒損失貸倒損失

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建物の減価償却【最重要論点】

建物の構造別耐用年数

建物の減価償却は、構造別の法定耐用年数で計算します(国税庁の主な減価償却資産の耐用年数表)。土地は減価償却の対象外で、建物部分のみが対象です。

建物構造 住宅用耐用年数 償却率(定額法)
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)47年0.022
鉄筋コンクリート造(RC)47年0.022
重量鉄骨造(骨格材4mm超)34年0.030
軽量鉄骨造(骨格材3〜4mm)27年0.038
軽量鉄骨造(骨格材3mm以下)19年0.053
木造・合成樹脂造22年0.046
木骨モルタル造20年0.050

定額法が原則(建物は強制適用)

個人の減価償却は原則として定額法が適用されます。1998年4月1日以降に取得した建物本体、2016年4月1日以降に取得した建物附属設備・構築物は、定額法での償却が強制されます(定率法の選択不可)。

中古物件の見積もり耐用年数

中古物件は次の式で見積もり耐用年数を計算します。法定耐用年数より短くなり、減価償却費を多く計上できます。

  • 法定耐用年数を全部経過:法定耐用年数 × 20%(1年未満切り捨て・最低2年)
  • 法定耐用年数の一部経過:(法定耐用年数 − 経過年数) + 経過年数 × 20%

🧮 シミュレーション:築25年の木造アパート購入

築25年の木造アパート(法定耐用年数22年・経過25年=全経過)を1,500万円(土地500万・建物1,000万)で購入した場合、見積もり耐用年数=22年×20%=4年。建物1,000万円÷4年=年間250万円の減価償却費を経費計上できます。新築木造(22年償却)の年間45万円と比較して、初期5倍の節税効果。中古物件の節税効果が高いと言われる根拠です。

建物附属設備の分離償却

マンション・アパートには建物本体とは別に「建物附属設備(エアコン・給湯器・電気設備等)」が存在します。建物本体(RC造47年)と附属設備(15年)を分離して償却することで、減価償却費を増やすことができます。

附属設備 耐用年数
電気設備(配電盤・変電設備)15年
給排水設備・衛生設備15年
ガス設備15年
冷暖房設備(エアコン)13-15年
エレベーター17年

修繕費 vs 資本的支出の判定

修繕費の判定基準

建物の修繕に支出した金額のうち、原状回復・小規模修繕は「修繕費」として全額経費計上、価値増加・耐用年数延長を伴う大規模工事は「資本的支出」として減価償却処理します。

支出内容 処理
壁紙張替え・畳替え・襖張替え修繕費(全額経費)
原状回復(退去後の清掃・補修)修繕費
給湯器・エアコン交換修繕費 or 資本的支出
外壁塗装(従来の同等品質)修繕費
耐震補強工事資本的支出
フルリノベーション資本的支出
物件用途変更(店舗→住居等)資本的支出

20万円未満・60万円未満ルール

判定が難しい場合、次の形式基準で「修繕費」として処理可能です:

  • 1件20万円未満の修繕
  • おおむね3年以内の周期で行われる修繕
  • 60万円未満かつ前期末取得価額の10%以下の修繕

サラリーマン大家の損益通算メリット

給与所得との損益通算

サラリーマン大家(給与所得者)が不動産所得で赤字を出した場合、給与所得と損益通算でき、源泉徴収済みの所得税の還付を受けられます(所得税法第69条)。これがサラリーマンが不動産投資を行う最大の節税メリットです。

新築マンション投資の典型パターン

項目 金額(年間)
家賃収入1,200,000円
借入金利子300,000円
減価償却費(建物・附属設備)700,000円
管理費・修繕積立金・税金300,000円
不動産所得−100,000円(赤字)
給与所得との損益通算による還付(税率20%層)約30,000円

⚠️ 注意:土地分の借入金利子は損益通算制限の対象

租税特別措置法第41条の4により、不動産所得の赤字のうち「土地等の取得に係る借入金利子に対応する部分」は、給与所得等との損益通算が制限されます。例えば不動産所得の赤字50万円のうち、土地分借入金利子30万円が含まれている場合、損益通算可能なのは20万円のみで、残り30万円は切り捨てられます。土地分・建物分の借入金利子を分離計算する必要があります。

業種別シミュレーション【3パターン】

📐 シミュレーション前提条件

  • 2026年(令和8年)分・東京都内・基礎控除58万円・各種社会保険控除等は省略
  • 住民税は所得割10%・概算値・家賃収入は満室想定

パターン①:ワンルーム1室(業務的規模)

項目 金額
家賃収入(月10万×12ヶ月)1,200,000円
経費(管理費・税金・保険・利息)600,000円
減価償却費500,000円
青色申告控除10万円(業務的規模)100,000円
不動産所得0円
サラリーマン大家の場合の節税効果給与所得との損益通算は不可(黒字のため)

パターン②:アパート1棟(8室・業務的規模)

項目 金額
家賃収入(8室×6万×12ヶ月)5,760,000円
経費(管理・税金・保険・利息)1,800,000円
減価償却費(中古木造・耐用年数短縮)1,500,000円
青色申告控除10万円100,000円
不動産所得2,360,000円
所得税+住民税約350,000円

パターン③:アパート2棟(15室・事業的規模)

項目 金額
家賃収入(15室×6.5万×12ヶ月)11,700,000円
経費(管理・税金・保険・利息)3,500,000円
減価償却費2,800,000円
青色専従者給与(配偶者・月12万円)1,440,000円
青色控除65万円+基礎控除58万円1,230,000円
課税所得2,730,000円
所得税+住民税約430,000円
事業税(290万円超部分・5%)0円(課税所得290万以下のため)

税務調査リスクと対策

不動産所得の典型的な指摘パターン

指摘パターン 対策
家賃滞納分の売上計上漏れ支払期日基準で未収家賃計上
敷金の収入計上(誤った処理)預り金処理+退去時差引額のみ売上
借入金元本返済の経費計上利息部分のみ経費・元本は負債減少
資本的支出を修繕費として計上価値増加・耐用年数延長は資産計上
土地分借入金利子の損益通算土地分は損益通算制限対象
事業的規模を満たさず65万円控除業務的規模なら10万円控除のみ

2026年9月KSK2システムの影響

2026年9月稼働の国税総合管理システム後継版(KSK2)では、AI技術による不動産所得申告の異常値検知が大幅に強化されます。不動産登記情報・固定資産税情報・賃貸借契約のデータ照合が自動化され、無申告・過少申告者の自動抽出が高精度化します。

弊所の不動産所得支援実例

事例①:サラリーマン大家の損益通算で年20万円還付

会社員(年収700万円)・新築ワンルームマンション投資2件・年間家賃240万円。減価償却費・借入金利子・管理費等を考慮した結果、不動産所得は40万円の赤字。弊所での確定申告サポートにより、給与所得との損益通算で源泉徴収済み所得税の還付20万円を獲得。土地分の借入金利子の損益通算制限を考慮した正確な計算で、追徴リスクも回避。

事例②:中古木造アパートの減価償却最大化で年45万円節税

築28年木造アパート1棟(10室・物件価格2,500万円)を購入。建物価格1,500万円・土地価格1,000万円。法定耐用年数22年経過の中古物件のため、見積もり耐用年数=22年×20%=4年で計算。年間建物減価償却費=1,500万円÷4年=375万円。さらに建物附属設備を分離償却して年間減価償却費を450万円まで増やし、年間約45万円の節税効果を実現。

事例③:事業的規模認定で年55万円節税

アパート2棟(計14室)+駐車場20台+戸建て1棟の不動産投資家(本業会社員)。総換算室数=14+4+4=22室相当で事業的規模に該当する状態。これまで業務的規模として申告していたが、弊所の検証により事業的規模認定。青色申告特別控除55万円増額(10万→65万)+青色専従者給与年144万円(配偶者)+固定資産除却損の全額計上で、年間約55万円の節税効果を実現。

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よくある質問(FAQ)

家賃収入はいつ売上計上すべきですか?
契約上の支払期日基準で計上します(所得税基本通達36-5)。「実際に入金された日」ではなく「支払期日」が基準。例えば「月末払い・翌月分前払い」契約なら12月末日に翌1月分家賃を売上計上、入居者が滞納していても支払期日に未収家賃として計上します。家賃滞納が回収不能になった場合は、その時点で「貸倒損失」として経費計上します(事業的規模なら回収不能年・業務的規模なら過去年の修正申告)。
敷金は売上計上しなくていいんですか?
返還する敷金は売上計上しません。敷金は「退去時に返還する義務がある預り金」のため、貸借対照表上の「預り金(または預り敷金)」として負債計上します。退去時に原状回復費用等を差し引いて返還し、差額が出た場合(返還しない部分)は当期の収入として処理します。一方、礼金・更新料・保証金の償却部分(返還しない部分)は受取時に売上計上するのが正解です。
借入金の返済は全額経費にできますか?
いいえ、利息部分のみが経費です。借入金返済のうち、経費(支払利息)になるのは利息部分のみで、元本返済部分は経費になりません。元本返済は借入金(負債)の減少として処理します。月々10万円返済(元本7万円+利息3万円)の場合、経費計上は3万円のみです。さらに不動産所得の赤字のうち土地分借入金利子に対応する部分は、給与所得との損益通算が制限されるため(租税特別措置法第41条の4)、土地分・建物分の利子を分離計算する必要があります。
5棟10室基準を満たさないと事業的規模になれませんか?
形式基準を満たさなくても、実質基準で事業的規模と認められる可能性があります。所得税基本通達26-9では「社会通念上事業と称するに至る程度の規模」が判定基準で、5棟10室は形式基準。実質基準では①営利性・継続性、②事業遂行性、③人的・物的設備、④精神的・肉体的労力、⑤事業者の職歴・社会的地位等で総合判断されます。年間賃貸料950万円の3階建て1棟で事業的規模が認められた裁決事例もあります。形式基準未満でも事業性を示す管理業務記録・契約書整備等で認定の可能性が高まります。
建物の減価償却はどう計算しますか?
構造別の法定耐用年数で定額法計算が原則です。RC造47年・重量鉄骨34年・軽量鉄骨27年/19年・木造22年。土地は減価償却対象外で建物部分のみが対象。中古物件は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で見積もり耐用年数を算出し、法定耐用年数を全部経過した場合は法定耐用年数×20%(最低2年)。築28年の木造アパート(法定22年・経過28年=全経過)なら、22年×20%=4.4年→4年で償却します。中古物件ほど減価償却スピードが速く節税効果が高くなります。
壁紙張替えは修繕費で全額経費にできますか?
通常の壁紙張替え・畳替えは修繕費として全額経費可能です。原状回復・小規模修繕は修繕費(全額経費)、価値増加・耐用年数延長を伴う大規模工事は資本的支出(資産計上+減価償却)。判断が難しい場合は形式基準として①1件20万円未満、②3年以内の周期で行われる修繕、③60万円未満かつ前期末取得価額の10%以下のいずれかに該当すれば修繕費として処理可能です。耐震補強工事・フルリノベーション・物件用途変更は資本的支出となります。
サラリーマンが赤字になった場合、税金は戻りますか?
給与所得との損益通算で還付金を受けられます(所得税法第69条)。会社員の不動産所得が赤字になった場合、確定申告で給与所得と損益通算でき、源泉徴収済みの所得税の還付を受けられます。例えば不動産所得赤字40万円・給与所得600万円の方は、合算所得560万円で再計算し、源泉徴収との差額が還付されます(税率20%層で約8万円還付)。ただし、土地分借入金利子に対応する赤字は損益通算制限対象のため、土地分・建物分の利子分離計算が必要です。
マンション1室だけでも青色申告できますか?
できます。ただし青色申告特別控除は10万円のみです。事業的規模(5棟10室基準)を満たさない業務的規模では、青色申告特別控除65万円・青色専従者給与・全額資産損失算入の優遇措置は適用されず、青色申告特別控除10万円のみ受けられます。それでも白色申告と比較して所得が10万円圧縮できる節税効果があります。将来的に物件を増やす計画がある場合、業務的規模の段階から青色申告で帳簿付けの習慣をつけておくことをお勧めします。
物件購入時の仲介手数料・登録免許税は経費になりますか?
取り扱いが分かれます。①不動産取得税・登録免許税は「租税公課(全額経費)」または「取得価額算入(減価償却)」のいずれかを選択可能。②司法書士の登記費用は同様に選択可能。③仲介手数料は土地分・建物分に按分し、土地分は土地の取得価額に算入(減価償却対象外)、建物分は建物の取得価額に算入(減価償却対象)。通常は租税公課・支払手数料として全額経費計上する方が節税効果が高いケースが多いですが、初年度の所得圧縮を抑えたい場合は取得価額算入を選択します。
空室期間が長い物件の経費はどうなりますか?
空室期間でも「賃貸の用に供している」と認められる場合は経費計上可能です。判定基準は①入居者募集を継続している、②原状回復・修繕を行い貸付可能な状態を維持、③過去に賃貸実績がある、です。これらを満たせば、空室期間中の管理費・固定資産税・減価償却費等を全額経費計上できます。一方、長期間入居者を募集せず放置している物件は「賃貸の用に供していない」と判定され、経費否認の可能性があります。空室対策の記録(募集広告・不動産会社への依頼書面等)を保存することが重要です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 不動産所得は事業所得とは別の独立した所得区分(所得税法第26条)
  • 5棟10室基準で「事業的規模」を判定・青色控除65万円+専従者給与の節税メリット大
  • 家賃は契約上の支払期日基準で計上(滞納でも支払期日に未収計上)
  • 敷金は預り金処理・礼金/更新料/保証金償却部分は売上計上
  • 借入金返済の経費は利息部分のみ・元本返済は負債減少
  • 土地分借入金利子は損益通算制限の対象(租税特別措置法第41条の4)
  • 建物の減価償却は構造別耐用年数(RC47年・木造22年)・土地は対象外
  • 中古物件は見積もり耐用年数で減価償却スピード加速・節税効果大
  • 修繕費 vs 資本的支出は20万円・3年周期・60万円ルールで判定
  • サラリーマン大家は給与所得との損益通算で還付金獲得

🎯 次のアクション

  • 所有物件を5棟10室基準で換算し、事業的規模/業務的規模を判定
  • 家賃の支払期日と入金日を区別して、未収家賃の計上漏れを防止
  • 敷金は預り金として負債計上、礼金・更新料は売上計上に切替
  • 借入金の元本/利息を分離し、土地分/建物分の利子も分離計算
  • 建物の構造別耐用年数で減価償却を再計算し、附属設備を分離償却
  • 修繕費 vs 資本的支出の判定を見直し、誤った経費計上を修正
  • 業務的規模から事業的規模への拡大を検討(物件追加・駐車場拡張)
  • サラリーマン大家は給与所得との損益通算で還付金を獲得

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