税理士(第142873号)・公認会計士(第28451号)・社会保険労務士・行政書士が監修。年間100社以上の整体師・柔道整復師・鍼灸師・治療院オーナーの確定申告・節税相談・税務調査対応を担当。
整体師・治療家の確定申告【自費診療と保険診療の経費の違い】
整体師・柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師等の治療家の確定申告に必要な情報を完全網羅。国家資格と民間資格の違い、自費診療と保険診療の売上認識、受領委任払いの処理、施術ベッド・テーピング等の経費、消費税区分まで、税理士が現場の知見で完全ガイドします。
🏆 結論:治療家の確定申告は「資格×診療形態」で処理が分かれる
柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師は国家資格で、保険診療(療養費)が可能。整体師・カイロプラクターは民間資格で全額自費診療です。柔道整復師の保険診療は「受領委任払い」で、患者から自己負担分のみ受取り、保険者に残額を請求する2系統の売上認識が必要。施術ベッド・低周波治療器等の高額機器は減価償却対象(耐用年数6年)。物販(健康食品・サポーター)は第2種事業(みなし80%)で消費税区分管理の節税効果があります。青色申告で年間20〜40万円の節税が一般的です。
治療家の3分類と確定申告の特徴
国家資格と民間資格の違い
「治療家」と総称される業種は、資格の有無によって診療形態と税務処理が大きく異なります。
| 職種 | 資格 | 保険診療 | 医療費控除対象 |
|---|---|---|---|
| 柔道整復師(整骨院) | 国家資格 | ○(受領委任払い) | ○(治療目的) |
| あん摩マッサージ指圧師 | 国家資格 | ○(医師同意要) | ○(治療目的) |
| はり師・きゅう師(鍼灸院) | 国家資格 | ○(医師同意要) | ○(治療目的) |
| 整体師・カイロプラクター | 民間資格 | ×(全額自費) | ×(民間資格は対象外) |
| セラピスト・リフレクソロジスト | 民間資格 | ×(全額自費) | ×(リラクゼーション) |
💡 実務のポイント:医療費控除の対象は国家資格保持者の治療目的のみ
患者側の医療費控除対象は、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の国家資格保有者による「治療目的」の施術のみ。リラクゼーション・体調管理・予防目的は対象外です。整体師・カイロプラクターは民間資格のため、患者側で医療費控除を受けられません。領収書の発行時にこの違いを説明できる体制が信頼を生みます。
柔道整復師の保険診療と受領委任払い
受領委任払いの仕組み
柔道整復師の保険診療は、本来「償還払い」(患者が全額立替→保険者へ請求)が原則ですが、例外として「受領委任払い」が認められています。患者は自己負担分(1〜3割)のみ整骨院の窓口で支払い、整骨院が代わりに残額を保険者に請求します。
| 支払い経路 | 支払者 | 受取タイミング | 売上計上 |
|---|---|---|---|
| 自己負担分(1-3割) | 患者 | 施術日に窓口受取 | 施術日 |
| 保険者請求分(7-9割) | 健康保険組合・協会けんぽ・市町村等 | 施術月の2-4ヶ月後 | 施術日(売掛金計上) |
| 保険診療売上の合計 | 患者+保険者 | 2系統合算 | 総額10割で計上 |
保険診療売上の認識タイミング
保険診療の売上は、施術日(役務提供日)に総額10割で計上するのが原則です。患者から受け取った自己負担分はその日の現金売上、保険者請求分は売掛金として計上し、入金時に売掛金消込します。
🧮 シミュレーション:保険診療1回の仕訳
柔道整復師の保険診療1回(料金1,000円・3割負担)のケース:①施術日に患者から300円受取+保険者請求分700円を売上計上(合計1,000円)。②2-4ヶ月後に保険者から700円入金で売掛金消込。施術月の売上は「現金売上+売掛金」の合計を必ず把握する必要があります。償還払い拒否や査定減額(医療費の請求が一部認められないこと)にも対応する仕訳が必要です。
査定減額(請求の一部不認可)の処理
保険者からの請求金額が一部認められない場合(査定減額)、当初計上した売掛金との差額を「貸倒損失」または「売上値引」として処理します。査定理由の記録を保存し、再請求の余地があれば検討してください。
自費診療と保険診療の経費区分
共通経費と専用経費
柔道整復師・鍼灸師は自費診療と保険診療を併用するケースが多く、経費の区分が必要です。
| 経費の種類 | 自費診療専用 | 保険診療専用 | 共通経費 |
|---|---|---|---|
| 施術用消耗品 | 高級アロマオイル・専用クリーム | テーピング・包帯・湿布 | タオル・施術ベッド・施術用シーツ |
| 機器 | 最新美容機器・矯正機器 | 低周波治療器・温熱治療器 | 受付PC・予約システム |
| 研修・研鑽 | 整体技術セミナー | 柔整研修・保険請求実務講習 | 医療系学会参加費 |
| 広告 | エキテン・ホットペッパービューティ | 地域密着型チラシ | ホームページ・看板 |
消費税の区分管理
保険診療売上は消費税非課税、自費診療売上は消費税課税対象です。簡易課税を選択する場合、課税売上のみで事業区分を判定し、保険診療部分は分母から除きます。
| 売上区分 | 消費税 | 事業区分(簡易課税) | みなし仕入率 |
|---|---|---|---|
| 保険診療売上 | 非課税 | 対象外 | ─ |
| 自費診療売上 | 課税 | 第5種(サービス業) | 50% |
| 物販売上(健康食品・サポーター等) | 課税 | 第2種(小売業) | 80% |
| 健診・産業医報酬 | 課税 | 第5種 | 50% |
治療家の働き方4形態
| 形態 | 業務委託 | 面貸し | 出張専門 | 自院経営 |
|---|---|---|---|---|
| 契約相手 | 治療院 | 治療院(場所のみ) | なし | なし(自営) |
| 保険診療 | 院長名義で可能 | 困難 | 出張専門は条件付 | 自分名義で可能 |
| 主な経費 | 道具・研修費 | 面貸し料+消耗品 | 交通費+ベッド携帯 | 家賃+人件費+全費用 |
| 適した方 | 独立直後 | 固定客あり | 高齢者向け | 経験5年以上 |
治療家の認められる経費20種
| 勘定科目 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| ①消耗品費 | テーピング・包帯・サージカルテープ | 10万円未満は全額 |
| ②工具器具備品(減価償却) | 施術ベッド・低周波治療器・温熱治療器 | 耐用年数6年 |
| ③医療消耗品 | 湿布・消毒薬・サポーター(業務用) | 期末棚卸対象 |
| ④仕入 | 物販用健康食品・サプリ・サポーター | 期末棚卸対象 |
| ⑤鍼・灸用品 | 使い捨て鍼・もぐさ・線香 | 100%消耗品費 |
| ⑥施術用クリーム・オイル | マッサージオイル・指圧クリーム | 100%消耗品費 |
| ⑦地代家賃 | 院家賃・自宅治療院の按分 | 家事按分 |
| ⑧水道光熱費 | 電気・水道・ガス・温熱療法用電気代 | 家事按分 |
| ⑨通信費 | 電話・インターネット・予約システム | 業務利用割合 |
| ⑩広告宣伝費 | エキテン・ホットペッパー・チラシ・看板 | 100% |
| ⑪研修費 | 技術セミナー・学会参加費・新療法研修 | 100% |
| ⑫新聞図書費 | 医学書・専門誌・健康関連書籍 | 100% |
| ⑬旅費交通費 | 出張施術・学会出張・研修移動 | 100% |
| ⑭支払手数料 | レセプト請求代行・カード決済・振込 | 100% |
| ⑮衛生費 | 消毒薬・滅菌器・使い捨て手袋 | 100% |
| ⑯リネン費 | タオル・施術用シーツ・クリーニング | 消耗品費or賃借料 |
| ⑰修繕費 | 施術ベッド・治療器の修理 | 20万円未満は全額 |
| ⑱保険料 | 院火災保険・賠償責任保険・医師賠責 | 100% |
| ⑲会費 | 柔整師会・鍼灸師会・各種協会会費 | 100% |
| ⑳福利厚生費 | スタッフ健康診断・予防接種 | 100% |
⚠️ 注意:レセプト請求代行業者への手数料は100%経費
柔道整復師・鍼灸師の保険診療では、レセプト請求業務を代行業者(請求代行業)に委託するケースが多いです。代行手数料(売上の3-7%程度)は「支払手数料」として全額経費計上できます。査定減額の対応・国保連合会への提出代行も含めて契約することで、業務効率化+税務処理の正確性が向上します。
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📐 シミュレーション前提条件
- 事業所得+青色申告(電子帳簿保存で65万円控除)
- 独身・基礎控除95万円・社会保険料控除40万円
- 東京都在住・住民税10%
| パターン | A(整体師・自費のみ) | B(柔道整復師・併用) | C(治療院経営) |
|---|---|---|---|
| 年間売上 | 600万円(自費100%) | 1,200万円(保険70%+自費30%) | 2,400万円(多店舗) |
| 経費(経費率) | 200万円(33%) | 450万円(38%) | 1,400万円(58%) |
| 青色申告控除 | 65万円 | 65万円 | 65万円 |
| 所得控除合計 | 135万円 | 135万円 | 135万円 |
| 課税所得 | 200万円 | 550万円 | 800万円 |
| 所得税+住民税 | 約30万円 | 約108万円 | 約177万円 |
| 消費税 | 非課税事業者(売上1000万以下) | 自費分のみ簡易18万円 | 自費分のみ本則35万円 |
| 税負担合計 | 約30万円 | 約126万円 | 約212万円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
治療院の税務調査リスク
現金商売としての高リスク業態
治療院は美容室同様、現金商売の典型業態で税務調査の対象になりやすい業界です。特に注意すべきは以下の項目です。
| 調査ポイント | 推計課税の手法 | 対策 |
|---|---|---|
| 予約台帳と売上の乖離 | 予約管理データ照合 | 予約台帳7年保存 |
| レセプト件数と保険売上の乖離 | 国保連合会・支払基金データとの突合 | レセプト写し7年保存 |
| 物販売上の漏れ | 仕入数と販売数のバランス | 在庫管理+POSレジ |
| 自費診療の売上漏れ | タオル使用量から客数推定 | 領収書ナンバリング |
令和8年度税制改正の影響
📢 治療家に関係する主な税制改正
- 基礎控除95万円:48万円→95万円(2025年分以降)。所得95万円以下なら所得税ゼロ
- 少額減価償却特例の40万円拡充:2026年4月以降の取得分は40万円未満まで一括経費化(高機能治療器・施術ベッド等)
- インボイス2割特例終了:2026年9月で終了。3割特例(個人のみ・2027〜2028年)へ
- 取適法(旧下請法):2026年1月施行で業務委託先治療院との契約が公正取引委員会監督下に
弊所の整体師・治療家実例3パターン
事例1:柔道整復師の保険診療売上計上漏れの修正
柔道整復師Aさん(年商1,500万円・8年目)が、保険診療の売掛金(保険者請求分)を入金時に売上計上していました。本来は施術日に売上計上+売掛金で処理すべき。
過去3年分の修正により、各年の期末売掛金(200万円程度)が売上に計上漏れと判明。期ズレ修正で当期売上が増えたものの、翌期売上が減るため累計の本税はほぼ変動なし。過少申告加算税のみ若干発生で済みました。
事例2:自費診療と保険診療の経費区分で年間20万円節税
整骨院経営Bさん(年商1,800万円・10年目)が、消費税の簡易課税で全額第5種計算していました。保険診療売上が60%(非課税対象外)、自費売上30%、物販10%の構成。
事業区分を整理して①保険診療は消費税対象外、②自費診療は第5種、③物販は第2種で計算し直し。年間消費税納付額を90万→70万円に圧縮(年間20万円節税)。区分管理体制も構築できました。
事例3:施術ベッド・低周波治療器の少額減価償却で本年18万円節税
鍼灸院開業Cさん(年商800万円・1年目)が、開業時に施術ベッド3台(各28万円)と低周波治療器1台(35万円)を購入。本来は減価償却で6年に分割計上ですが、青色申告者の少額減価償却特例(30万円未満)を活用すれば、施術ベッド3台分84万円を一括経費化可能。
当年に84万円の経費追加で課税所得を圧縮。所得税・住民税合計で約18万円の節税効果を実現。ただし低周波治療器35万円は通常の減価償却(6年)となります。
よくある質問
まとめ
📋 この記事のポイント
- 柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師は国家資格で保険診療可能
- 整体師・カイロプラクターは民間資格で全額自費診療
- 柔道整復師の保険診療は受領委任払いで施術日に総額10割で売上計上
- 保険診療売上は消費税非課税、自費診療と物販は課税対象
- 施術ベッド・治療器は耐用年数6年(少額減価償却特例30万円未満で一括経費化)
- レセプト請求代行手数料は100%経費(支払手数料)
- 物販売上は第2種事業区分(みなし80%)で消費税節税
- 青色申告で年間20〜40万円の節税効果
📋 次のアクション
- 保険診療と自費診療の売上区分体制を整える
- レセプト写しを7年間保存する仕組みを作る
- 施術ベッド・治療器の購入は2026年4月以降にして40万円特例を活用する
- POSレジで物販と施術料の自動区分を導入する
- 青色申告開業届を提出する(事業所得化)
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